問題は日本史教育を主題次第でいろんな歴史観を使おうというところにある。かといって極端な人民史観(部落中心史観)でやるというのもどうかなと思う。なにしろそれじゃあ世の中が見えないというものだ。
ところがこいつはすごい。手にとって驚いた。部落史学習と銘打ってはいるが、中身はまっとうに日本史の教材なのだ。んで、冒頭に書かれている福岡市同研による「部落史学習の現状と課題」を見てみるとわたしと同じように特別な学習としての部落史学習はまずいということに気づいてんだな(あたりまえか、市同研なんだから)。つまりは部落問題(史)学習が特別な学習になっていることとか、教師の価値観を押しつけていることなんかをぞろぞろ並べて総括している。かなり耳の痛い批判的総括だ。さらに歴史学習における学力保障という点にも批判は及ぶ。部落問題学習や部落史学習だけにこだわっていれば学力保障の観点は欠落する。子どもたちが楽しく学び、よくわかるというふつうに日常的な授業改革が必要なんだとうったえているのだ。
で、授業のめあてをきちんと確認し、流れをおさえた上でいかに子どもたちの学びを引き出すかという工夫がちりばめられている。それも編者の技巧を押しつけるのではなく、授業者自身が創意工夫できるように気持ちが行き届いているのだ。そして何よりすごいのが資料だ。基本的に資料から発言するという姿勢をとっているので、使われている資料はよく精選されている。よく学校は著作権の無法地帯だという言われるが、それは本書に収められているということできっと市同研がかぶってくれるのだろう。安心して使える(但し、190頁の「データ利用上の注意」をよく読むこと)。
そうそう何よりすべての資料が添付のCD-ROMにぜえーんぶ入っていて、必要なところを切り取って自分独自の教材を作ることができる。これは便利だ。資料は全部で128点、使いでがあるのだ。ともかく感動した!福岡市の教員は幸福だねぇ。
☆☆☆☆ これは部落史学習の、というより日本史学習の革命だと思う。さぞかし、福岡市のセンセイたちはいい授業をしてくれるだろうし、子どもたちもすばらしい学習ができるのだと思う。本書は上巻なので江戸幕府の崩壊まで。近代を扱うだろう下巻が楽しみだ。県同教も負けずにいいのを作らないとね…。

